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【読書感想】「誰が勇者を殺したか(著者:駄犬)」

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【読書感想】「誰が勇者を殺したか(著者:駄犬、出版:角川スニーカー文庫)」

今回もAudible(オーディブル)で聞いた本の感想となります。リンクは楽天ブックスですが。

さて、このタイトル「誰が勇者を殺したか」から、あなたならどのようなストーリーを思い描くでしょうか。

私は、犯人を捜す推理小説か、ミステリー系のストーリーになっているのでは?と思いました。

勇者の冒険譚や活躍といった内容もあるだろうとは思いました。しかし、”殺した”とあるから、ただの英雄譚、冒険譚ではないことが予想されます。さらに”誰が”と犯人を示すワードが使われているのです。犯人を捜したくなるでしょう。

ところが、期待は裏切られました。

そもそも、殺された勇者は誰だったのか?そこが問題だったんですよ!

いやー。とても意表を突かれました。こんなストーリーの展開の仕方だとは、タイトルからは想像もできませんでした。それと同時に、よく考え込まれた物語だと思いました。

聞き終わって、面白かった。もう一回聞きたい!

そう思わせられた作品でした。

さて、ネタばれしない程度に、本作品のおすすめポイントをまとめてみましょう。

勇者は一人じゃない

まず、『勇者』とは、どのような人物なのか?

この本に描かれている『勇者』は、一人ではありません。

この物語の世界では、「魔王を討伐できるのは勇者である」と言われています。では、誰が『勇者』となって魔王を倒すのか?それは、誰にも分りません。しかし、誰かが倒さなければ世界が滅んでしまいます。

そこで、国は『勇者』と成り得る人材、勇者候補を育成する学校を設け、有能な人を入学させるのです。

だけど、『勇者』は学生の中から見つかるとは限らない。勇者候補は、世界中に存在しているのです。

さらに、『勇者』に選ばれた人は、死ぬかもしれないのに、魔王に挑まなければならない。

そんな『勇者』になりたいと思う者、なりたくないと思う者、そして、送り出したくないと思う者がいる。

勇者候補の生い立ちや希望、葛藤、そして魔王軍との戦闘、さらにその死に様を描きながら、『勇者』という存在について考えさせられる展開が盛りだくさんです。

さらに、『勇者』を探す”予言者”と呼ばれる存在。この作品は、予言者が勇者を探す物語でもありました。

予言者と勇者候補の会話も、とても魅力的に思います。

登場人物のそれぞれの視点から描かれる『勇者』の姿は、その存在する意味に一石投じるものだと思います。

殺すという意味

物語の中で、勇者と呼ばれる多くの人が死にます。その勇者の死の原因は誰にあるのか?

敵対する相手に殺されたのだから、殺したのは敵対する相手である。それは間違いない。

しかし、勇者の死に間接的に関わった者たちがいる。その者たちもまた、勇者を殺した人物と言えよう。

その辺りの話の展開が、とても読み応えがあります。

また、生命を奪わなくとも、勇者という存在を殺した事になる話も感慨深いものがありました。

「死んだ事にしてくれ」と言う勇者の言葉に秘められた思い。

友情とか愛情とか仲間への思いとか、他者を思う気持ちに、打算的な部分が見え隠れして、人間ドラマを感じさせられました。

登場人物の一人一人の人生が細部まで作りこまれている

視点を変えながら一人の勇者の死を見つめ直していきます。すると、思いもよらなかったドラマが展開していた。

一見、勇者と関係がない出来事のように思われていたことが、実は勇者の死に影響を与えていた。

時間も場所も変えながら、登場人物のドラマが描かれていく。

読み進めるごとに、登場人物達の生活が見え、その思いや葛藤を想像させられます。

勇者を殺した、殺してしまった、殺すしかなかった、というようなものから、見殺しにした、と言うようなものまで、実に複雑な思いを感じることができました。

登場人物たちの心の機微を想像させられる作り込みが、とても見事だと思います。

どんな時に読みたいか

本を聞き終わったときに思ったのは、全体的に、ややネガティブな印象が強いかな?ということ。

勇者の冒険の話に該当するけど、ドキドキわくわくという話ではない。そして、推理をする話でもない。どちらかというと、なぜ勇者を殺したのかを告白するような話に聞こえる。

勇者を殺した理由と、そこに至るまでの心理描写が、他人に向ける感情について考えさせられるように思う。

だから、身の回りの人との人間関係にストレスを感じているときとか、ちょっとネガティブなことがあって一人になりたいときに聞くといいかもしれない。

私の場合は、だが。

大切にしたい人の事を考えるとき、こんな気持ちになるんだろうか?そんな風に思いながら切なくも暖かい気持ちになれる。

一人になりたい。でもちょっと寂しい。

ぜひ、そんな時に読みたい一冊でした。

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