第1章 黒鉄健一の警察学校生活スタート編
第1話 教場(教室)
敷地を取り囲む灰色でコンクリート造りの塀と、外部からの侵入者を拒絶するために設置された塀の上の有刺鉄線が、普通の学校との違いを大きく物語っている。正門には車両の出入りを阻止するアングルとパイプ柵。塀沿いに設置された防犯センサーと正門に向けられた防犯カメラ。そして、正門には2名の警察官が立っていた。
健一は正門が近づくにつれ、緊張で鼓動が高まるのを感じていた。この緊張は、これから始まる新たな警察学校生活に対する期待と不安だろうか。それとも、度々問題を起こす弟の隆二のせいで、警察官に苦手意識を感じているからだろうか。
健一は、背筋を伸ばして正門に立つ警察官の一人に声を掛けた。
この日、誠一と同様に警察学校に入校する生徒が続々と集まってきており、正門に立つ警察官は、ところどころに設置された案内板に従って、講堂に向かうようにと案内していた。
案内板に従って講堂に向かった健一は、講堂の入口で新入校生の受付を済ませ、講堂の中に入り、指示された席へと向かった。受付で渡された席次表が、そのままクラス分けの表になっていた。
『第1527期、藤井教場、No.6、黒鉄健一』
そう印字された茶封筒の中には、学校敷地内の案内図やらこれから1週間のスケジュールやら注意事項やらが書かれた印刷物が入っていた。健一は、座席に腰掛け、茶封筒の中から印刷物を取り出してざっと目を通した。
(なんだ。今日、入学式みたいなことするのかと思ったら違うのか)
スケジュールには、1週間の仮入校の期間が設けられていることが書かれていた。そして、末尾に太字で印字された一文を見て、健一は息を飲んだ。
『当仮入校期間中に採用が取り消される場合があります』
そう。健一が警察官として正式に採用されるのは、この仮入校期間を乗り越えた後となるのだ。そのことは、講堂で行われた”仮入校説明”の際にも説明された。
「えー、それでは。この後の予定をご説明いたします。皆さんには、この後、それぞれの教場に移動していただきます。そこからは、担当の教官と助教、それから世話係の先輩の指示に従ってください。それでは解散とします。移動を開始してください」
講堂での一通りの説明が終わり、健一は教場へと移動した。
教場とは、高校などでいうところの教室。教官は担任で助教は副担任を指している。健一は、そう理解した。
教場に入ると、机と椅子が33人分並べられている。正面に黒板があり、背面の壁には、人数分以上の枠に仕切られた棚がある。今まで見てきた教室と大差はない。
机に近づくと、それぞれの机に番号が貼られていた。それが出席番号を示していることは直ぐに分かった。
健一は、自分の席を探して座った。まだ、空席も目立つが、教場に集まった者たちは、全員が互いに初対面である。親し気に会話する姿など、どこにも無かった。
(今日から、こいつらとここで警察官になるための勉強をするのか)
明らかに着慣れていないビジネススーツ姿の同期たちの様子を眺めながら、高校生の頃の新学期の様子を重ねてみる。そして、どこか高校入学の時と似ているな。と、つい頬を緩ませてしまう。高校生活とは、似ても似つかない毎日が待っているというのに。
著者より
私が警察学校に入ったのは、1990年(平成2年)のことでした。当時は、高卒・中途採用の就学期間は1年間でした。今は10か月のようですね。なぜ2ヶ月間短くなったのかは知りません。それに、今、振り返ると、1年間で良かったかなぁとも思うし。なので、健一くんにも1年間過ごしてもらう設定にしています。
当時も仮入校の期間は1週間でした。全寮制で、学生は全員寮生活。敷地外への外出は不可でした。
当然ですが、20歳未満の未成年者は飲酒・喫煙不可。
刑法、刑訴法、民法、警察法、警職法、道交法などの法律や柔道、剣道、合気道、逮捕術などの武道訓練だけじゃなく、華道、茶道の作法なんかの授業もありました。内容の濃い1年間でしたね~。ほんと、いろんなことがありました。大変な1年でしたけど、いい思い出ですね。当時は、か・な・り、辛かったけどね。
さて、健一くんの警察学校生活スタート編。どんな生活が待っているのでしょうか。
そして、どんな事件に巻き込まれていくのでしょうか。
おたのしみに。
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