第1章 黒鉄健一の警察学校生活スタート編
第4話 敬礼と点呼
仮入校二日目は、一日かけて体力測定が行われた。ついこの間まで高校生だった健一は、柔道部で鍛えてきた自信もある。体力測定なんて余裕だ。と思っていた。
握力、垂直跳び、背筋、立ち幅跳び、懸垂、100m走と5000m走、その他。
これまでの健康診断で計測したことがない種目がいくつかあった。これを1日のうちに計測するのか。そう思うと目眩がした。
三日目からは、点呼の練習と入校式の練習が始まった。
まずは立ち方。踵を揃えて爪先を左右に45度開く。膝の間が開かないように尻に力を込め、上半身は胸を張り、左右の肩の高さを合わせる。手は指先を反らない程度に伸ばし、中指をズボンの縫い目に沿わせて体の側面に沿わせる。顎を引き、目が水平になるように頭の角度を調整する。いわゆる『気を付け』の姿勢だ。
「こらー!頭がふらふらしてるぞ!ふらふら揺れないように、しっかり立ってろ!」
望月助教の怒鳴り声が川路広場に響き渡る。
次に敬礼の仕方。帽子をかぶっていない時の敬礼は、お辞儀に似ている。ただ、号令に合わせなければならないため、これも、何度も反復して練習させられる。
「いいか、敬礼の”れ”に反応しろ!”れ”と同時に腰から上半身を30度傾けるんだ。敬礼の”れ”で尻を後ろに引く感覚だ。手のひらはズボンの縫い目から離すなよ。あと、折れ曲がるのは腰だけだからな。顎は引いたまま、首の角度も変えるなよ。それと体を起こすタイミングは、1、2、3で起こすんだぞ。敬礼、1、2、3で起こす。いいな」
敬礼にはもう一つあった。指揮台に立つ指揮官に敬礼するときは、顔を正面から指揮官に向けるというものだ。
「これも、敬礼の”れ”に遅れずに反応しろよ。指揮官の方に顔を向けるんだが、鼻を指揮官の顔に向けるようにするんだ。目だけ向けて顔が向いてない。なんてことがないように気をつけろ!」
最後に点呼だ。三列横隊で整列し、『番号』の号令で最前列のみ右から左へ順に番号を唱和する。最後列の左端の者は、番号の唱和に続いて、自分の縦列の人数に合わせて報告の声を上げる。
例えば、自分の縦列が3人揃っていれば『満』。一人足りなければ『1欠』。二人足りなければ『2欠』。といった感じだ。それを何度も繰り返し練習する。
藤井教場は、加賀谷がいなくなったため32名。三列横隊に整列すると、11列目が2人となり、つまり、『1欠』となる。
「もっとテンポよく唱和しろー!こういうのはリズムが大事なんだからな。あと、最後、イッケ~~~~ツッ!って伸ばした方がかっこいいぞ。じゃ、もう一回!」
これらの敬礼と点呼は、警察学校の中だけの話ではない。警察学校を卒業して警察署に勤務してからも練習を続けなければならないのだが、この話はここまでにしておこう。
入校式の前日、藤井教場から加賀谷の他にもう一人、不知火が去った。不知火は加賀谷と違って、採用を取り消されて退校した。なぜ採用が取り消されたのか?採用通知が発送されてから仮入校までの間に何かしでかしていたのか、健康診断で何か見つかったのか。その理由は、誰にもわからなかった。
こうして、最初、33人の予定だった藤井教場は、31人で入校式を迎えることになった。
入校式の前日の午後、健一たちは、貸与品と支給品を受け取った。貸与品は、制服、帽子、警察手帳、手錠、捕縄、警笛、警棒など。支給品は、ワイシャツ、ネクタイ、革靴、ジャージ、道着、校内服などがあった。シャツや靴下も支給され、パンツ以外の物が支給されたと言っても過言では無いくらいだ。
受け取ったそれらの物に自分の名前を油性ペンで書いていく。
「全部書いておけよ。それと、自分で持って来た物にも、後で書いておけ。パンツにも書くんだぞ」
と、持ち物の全てに書くように言われた。
(誰も他人のパンツなんか盗らねぇだろ)
誰もがそう思った。だから、貸与品と支給品には名前を書いたが、その他の私物に名前を書くのは、また今度にした。
著者より
毎日、朝と夜に点呼が行われていました。休日関係なし!毎日です。
私には、約30年前のことで、いや~、なんとも懐かしいですね。当時は、朝、起きるのがつらくて。でも、夜更かしとかできないから、意外と健康的な毎日でした。
健康といえば、警察学校に入って、毎日、訓練やランニング、筋トレと体を鍛えることをしていたおかげで、体重は60キロほどでした。警察学校を卒業後、不摂生と不規則な食生活で、現在85キロ。25キロも増量してしまった。
当時と同じくらいとはいかないけれど、ちょっとダイエットして、体重と体脂肪を落とさなきゃ・・って思う。
さて、次回は、私が警察学校で驚いた話を交えて、健一くんにも戸惑ってもらいましょう。
それでは、次回をおたのしみに。


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